王国へゆく

港に浮かぶ島と名付けられた埋立地の上に動物の王国が出来たというので行ってきた。動物の王国の民は皆動物である。犬猫に始まり、兎、羊、陸亀、大嘴(おおはし)、かぴばら、ぺりかん、あるぱか、かんがるーに至るまで、種々の鳥獣が檻に閉じ込められるこ…

こんな夢を見た。ふと気づくと私は郷里の我が家の外廊下に佇んでいる。いつ帰ってきたのだろうと不思議に思いながら外の景色に目を遣ると様子が普段と違う。家の前の坂道は一面水没していて、透き通った水の中を真っ黒で大きな鯱が何匹もうようよ泳いでいる…

私は、名前をもたない羊の縫いぐるみです。枕のように平べったい形をしていて(大きさも子供用の枕と丁度同じ位です)、白いぽりえすてるの体毛と渦巻き状の柔らかい角をもった、市販の縫いぐるみです。私は中国の安徽省にある縫製工場で多くの兄弟たちとと…

手袋

二条城の傍で四十年以上客にコーヒーとカレーを出し続けている喫茶店があって前々から気になっていたが最近初めて訪れた。六十年代の終わりからそう大して変わっていないだろうと思われる店内で、六十過ぎから七十位のお婆さんが三四人でゆっくりゆっくり切…

電飾祭

電飾祭を観に行きたいと云う彼女に連れられて神戸まで行く。四条烏丸から電車に乗ったのが夕方五時頃であったから、消灯の九時までには大方間に合うだろうと二人とも高をくくっていたら、途中店に入って買うでもない洋服を見物したり晩飯を食ったりして元町…

その日(加筆修正版)

二月も終わりの頃に臨時雇いで職場に来た彼女は端正な顔立ちで静々と自己紹介をする。極く真面目な大人しい娘という印象であったが二三日もすると皆と打ち解けてよく喋るようになり気立ても良かった。仕事をすぐに覚え、冗談をいうところころ笑った。 僕も彼…

その日

二月も終わりの頃に臨時雇いで職場に来た彼女は端正な顔立ちで静々と自己紹介をする。極く真面目な大人しい娘という印象であったが二三日もすると皆と打ち解けてよく喋るようになり気立ても良かった。仕事をすぐに覚え、冗談をいうところころ笑った。 僕も彼…